ネズミ駆除の業者に見積もりを頼む前に、市役所の助成金で費用を減らせないか。そう考えて調べている方に、先に結論を書きます。個人の家のネズミ駆除費に出る助成金は、ほぼありません。2026年9月に13の自治体の公式ページを確かめたところ、駆除費を補助していたのは東京都中央区の町会・商店街向けの制度だけで、個人が申請できるお金は千代田区の巣穴をふさぐ工事の助成(上限10万円)だけでした。
ただ、お金は出なくても、役所には無料で使える支援があります。殺鼠剤の配布、捕獲器の貸し出し、専門家の派遣などです。
私は害虫駆除業者として年間800件以上の現場に出ています。この記事では、自治体ごとの支援の中身と、それで足りる被害・足りない被害の境目をまとめました。賃貸で誰が払うのか、火災保険は使えるのかも書いています。
ネズミ駆除の助成金は個人宅の駆除費には出ない
ネズミ駆除の助成金は、個人の家の駆除費には出ないと考えてください。2026年9月に13の自治体の公式ページを確かめたところ、駆除費の補助は東京都中央区の団体向けの1件だけでした。個人が申請できるお金は、千代田区の巣穴の工事だけです。
| 自治体 | 制度 | 申請できる人 | お金が出るもの | 上限 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都中央区 | 地域ねずみ防除促進事業 | 町会・自治会・商店街など | 毒餌による一斉駆除、フタ付きごみ箱など | 20万〜100万円(構成員の数で変わる) |
| 東京都千代田区 | 路地等のねずみ巣穴対策助成 | 住宅の所有者・居住者、区内の事業所 | 私有地の路地の穴をふさぐ工事(駆除費・消毒費は対象外) | 工事費の3/4・10万円 |
| 東京都千代田区 | マンションのねずみ対策助成 | 分譲マンションの管理組合、賃貸マンションの所有者など | フタ付きごみ箱の購入、ごみ置き場の修繕 | 30万円 |
ほかの11自治体(大田区・品川区・新宿区・江東区・北区・横浜市・川崎市・船橋市・草加市・西条市・大阪市)は、お金ではなく相談や殺鼠剤、捕獲器といった形で支援しています。ネットには「〇〇市で駆除費を補助」と書いた記事もありますが、公式ページを見ると団体向けだったり、殺虫剤だけが対象だったりしました。新潟市の薬剤購入費の補助は、殺鼠剤が対象に入っていません。
中央区の補助は町会や商店街がまとめて駆除するときに使う
中央区の「地域ねずみ防除促進事業」は、町会・自治会・商店街・地域団体が申請する制度で、個人の家は対象外です。毒餌による一斉駆除やフタ付きごみ箱の購入、チラシの印刷にかかった費用の2/3が出ます(中央区ホームページ)。
| 団体の構成員数 | 上限額 |
|---|---|
| 100人以下 | 20万円 |
| 101〜200人 | 40万円 |
| 201〜300人 | 60万円 |
| 301〜400人 | 80万円 |
| 401人以上 | 100万円 |
2/3が出るのは、環境改善の実行委員会をつくって計画書と報告書を出す場合です。委員会をつくらない場合は1/2で、1団体1回までになります。申し込みの前に生活衛生課への事前相談が要ります。
近所の何軒かで同じようにネズミが出ているなら、町会長に相談してみる価値はあります。1軒だけ駆除しても、隣の家にいるネズミがまた入ってくることがあるためです。
千代田区の助成は路地の巣穴をふさぐ工事にだけ使える
千代田区の「路地等のねずみ巣穴対策助成」は、この調べで見つけた中で唯一、個人の住宅の所有者や住んでいる人が申請できる金銭の補助です。私有地の路地にあいた巣穴を埋めたり、地面を舗装したりする工事に、工事費の3/4、10万円までが出ます(千代田区ホームページ)。
注意点が3つあります。駆除や消毒の費用は対象外です。工事の契約より前に申請する必要があり、同じ場所は1回しか使えません。借りている家に住んでいる人は、所有者の承諾が要ります。
役所のネズミ対策は相談・殺鼠剤・捕獲器・専門家派遣の4つ
役所のネズミ対策は、お金の代わりに「相談」「殺鼠剤の配布」「捕獲器の貸し出し」「専門家の派遣」の4つのどれかで支援しています。どれも無料ですが、駆除まで引き受けると書いていた自治体はありませんでした。

| 自治体 | 殺鼠剤の配布 | 捕獲器の貸し出し | 専門家の派遣 |
|---|---|---|---|
| 東京都大田区 | ― | ― | ○(一般の家だけ・賃貸は対象外) |
| 東京都品川区 | ○(町会・商店街向け) | ― | ○(町会・商店街向け) |
| 東京都新宿区 | ○(1人1袋) | ― | ― |
| 東京都江東区 | ○(必要なとき) | ― | ― |
| 東京都北区 | 2021年3月で終了 | ○(必要なとき) | ― |
| 横浜市 | ― | ○ | ― |
| 川崎市 | ― | ○ | ― |
| 千葉県船橋市 | ○ | ― | ― |
| 埼玉県草加市 | ○ | ― | ― |
| 愛媛県西条市 | ○(自治会でまとめて申し込み・1世帯1袋) | ― | ― |
| 大阪市 | ―(薬剤の配布も駆除もしない) | ― | ― |
※2026年9月26日に各自治体の公式ページで確認。相談は、横浜市や大阪市のように保健所や区の生活衛生課が受け付けています。
どの支援をしているかは、同じ県の中でも市区町村でばらばらです。住んでいる市区町村名と「ネズミ」で検索すると、保健所か生活衛生課のページが出てきます。
殺鼠剤の配布は1人1袋など量が限られる
殺鼠剤を配っているのは、船橋市・新宿区・江東区・草加市などです。新宿区は保健所でサンプルを1人1袋、船橋市は保健所の衛生指導課と市内の各出張所で受け取れます(船橋市ホームページ)。
配られる量は台所まわりの数か所に置ける程度で、天井裏まで含めた家全体には足りません。
捕獲器の貸し出しは捕まえたあとの処理まで自分でする
捕獲器(捕獲用のカゴ)を貸しているのは、横浜市の各区の福祉保健センターや川崎市、北区などです。川崎市は、家の中にネズミが繰り返し入ってくる人に無料で貸し出しています(川崎市ホームページ)。

借りる前に考えておきたいのは、捕まえたあとです。カゴの中のネズミは生きているので、処理は自分でしなければいけません。ネズミを見るのも苦手という人には、殺鼠剤のほうが向いています。
大田区の専門家派遣は助言だけで駆除も穴ふさぎもしない
大田区は、ネズミの専門業者を無料で家に派遣してくれます。ただし公式ページには「ネズミの駆除は行いません」「侵入口の封鎖作業は、ご自身で行っていただきます」とあり、来てくれるのは侵入口の探し方と塞ぎ方を教えてもらう1時間ほどです(大田区ホームページ)。
対象は区内の一般の家で、その年度に初めて頼む人だけです。事業所と賃貸の住宅は対象になりません。2026年度は火曜と木曜に1日4軒までなので、電話で予約します。
役所の支援で足りるのは1階の台所まわりで数匹のうちだけ
役所の殺鼠剤や捕獲器で片づくのは、台所や1階の床下など手が届く場所に、数匹が出入りしている段階までです。天井裏から足音がする、フンが家の何か所にも落ちているなら、役所の支援だけでは足りません。

線を引く理由は巣の場所です。私が担当した現場では、半分以上の家で天井裏に巣がありました。天井裏は人がはって進む場所で、殺鼠剤を置くのも侵入口を探すのも、慣れていないと危ないです。しかもクマネズミは10円玉くらいの穴から入るので、1か所ふさいでも別の穴から戻ってきます。
手が届く場所で試すなら、役所の支援に市販の道具を足すと効きが違います。市販の殺鼠剤・粘着トラップ・忌避剤・穴をふさぐ補修材をひととおりそろえると1〜2万円かかるので、まずは次の3つから始めてください。
殺鼠剤は、ネズミが一度食べれば数日かけて効くタイプを選びます。すぐ効くものだと、仲間が倒れるのを見たネズミが警戒して食べなくなるからです。デスモアプロ 最後の晩餐はアース製薬の遅効性の殺鼠剤で、従来の殺鼠剤が効きにくいワルファリン抵抗性のネズミにも効くとメーカーが書いています。トレーのまま流しの下や食器棚の隅に置けます。子どもやペットが触れる場所には置かないでください。
殺鼠剤で数が減ってきたら、粘着シートで残りを捕まえます。私たちが使うのは家の形をした捕獲器ではなく、板状の粘着シートです。フンが落ちている壁ぎわに、すき間を空けずに何枚も並べてください。
最後に、見つけた穴をふさぎます。防鼠パテのキクネンはプロも使うネズミ用の忌避パテで、配管が壁を通る部分のすき間を埋めるのに向いています。ガムテープやプラスチックの板は、ネズミがかじって破ってしまいます。
トラップを置いて1週間たってもかからない、フンが増え続けるといった場合は、巣が天井裏など手の届かない場所にあると考えて業者に切り替えてください。自分でできる駆除の手順は自分でできるネズミ駆除の方法に、巣ができやすい場所はネズミの巣の見つけ方にまとめています。
賃貸のネズミ駆除は業者を呼ぶ前に大家か管理会社へ連絡する
賃貸の部屋でネズミが出たら、業者を呼ぶ前に大家か管理会社へ連絡してください。民法606条は、借りている人の責任でない限り、住むのに必要な修繕は貸している側の義務だと定めています。ネズミの侵入口をふさぐ工事も、この修繕に当たると考えられます。
ネズミ駆除の費用を誰が払うかをはっきり決めた法律や国のガイドラインはありません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にもネズミの記載はなく、台所やトイレの消毒は「賃借人の管理の範囲を超えている」として貸主の負担が妥当としています(国土交通省)。ネズミ駆除に当てはめるかは、最後は契約書と大家との話し合いで決まります。
先に自分で業者を呼んでしまうと、大家から「頼んでいない工事の費用は払えない」と言われることがあります。次の順番で進めてください。
- フンやかじられた跡、足音がする時間を、写真とメモで残す
- 大家か管理会社に、いつから・どこで・何が起きているかを伝え、駆除を頼めるか聞く
- 賃貸借契約書の「修繕」の条項を読み、借主が払うと書かれた項目にネズミ駆除が入っていないか確かめる
- 大家が動いてくれないときは、自分で業者を呼んでよいか、費用はどうするかを書面かメールで確認してから頼む
民法607条の2は、借りている人が伝えても貸主が相当の期間内に修繕しないときや、急ぎの事情があるときは、借りている人が自分で修繕できるとしています。それでも費用の話は後で必ずこじれるので、4の確認を飛ばさないでください。アパートやマンションでは隣の部屋から入ってきていることもあるので、ほかの部屋でも出ていないかを管理会社に聞くと話が早く進みます。
火災保険はネズミにかじられた損害を補償しない
火災保険で、ネズミにかじられた柱や配線を直す費用は出ないと考えてください。損保ジャパンの個人用火災総合保険のパンフレットでは、保険金を払えない主な場合に「ねずみ食い、虫食い等」が挙がっています(損保ジャパン 2025年9月版パンフレット 11ページ)。
東京海上日動も、ねずみ食い・虫食いが原因の損害は払わないとしています(東京海上日動)。ソニー損保の解説でも、ねずみ食い・虫食いは免責事項で、損害が生じても保険金は支払われないと書かれています(ソニー損保)。駆除の費用が保険で出るという公式の記載は、どの社にもありませんでした。
ネズミがかじった配線から火が出た場合の火災そのものについては、公式の記載を見つけられませんでした。契約している保険会社に、約款のどこに当たるかを直接聞いてください。保険の返事を待っている間にも、ネズミは増え続けます。
助成金を待つより早く業者に頼むほうが総額は安い
助成金が出ない以上、ネズミ駆除の費用をいちばん下げるのは、数が少ないうちに頼むことです。一般的な戸建ての駆除は3万〜5万円に収まることが多いのですが、放っておくと同じ家でも倍になります。
私の現場でも、1年前に呼んでもらえていれば数匹の駆除を2〜3万円で終えられたのに、その1年で数十匹まで増えて5万〜10万円かかった家がありました。そのお客さんには「去年からネズミがいるんですけど、駆除費用が高くなるんじゃないかと心配で、なかなか連絡できなかったんです」と言われました。費用を心配して待った1年が、そのまま費用を押し上げたことになります。
家が広いほど、天井裏と床下の調べる範囲も広がります。私が担当した5LDK・3階建ての家では、殺鼠剤を置いてから粘着トラップで残りを捕まえ、侵入口をふさぎ終えるまで3か月ほどかかり、費用は家全体で約12万円でした。
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見積書で何を確かめるかは、ネズミ駆除業者の選び方と6社の比較で5つの点にまとめています。
自治体には「ネズミ助成金3点確認」で問い合わせる
住んでいる市区町村に助成金があるかを確かめるときは、「誰が申請できるか」「どの費用が対象か」「いつ申請するか」の3点を聞いてください。私はこれを「ネズミ助成金3点確認」と呼んでいます。今回確かめた制度は、この3つのどれかで個人が使えないものがほとんどでした。
- 誰が申請できるか: 個人か、町会・商店街・管理組合などの団体か。中央区は団体だけ、千代田区の巣穴工事は個人も申請できます。賃貸なら、借りている人が申請できるのか、所有者の承諾が要るのかも聞きます
- どの費用が対象か: 駆除の費用か、穴をふさぐ工事か、ごみ箱などの物品か。千代田区は工事は対象でも、駆除と消毒は対象外です。「殺虫剤」だけが対象で殺鼠剤が入っていない制度もあります
- いつ申請するか: 業者と契約する前か、終わったあとでよいか。千代田区の巣穴工事は契約前の申請が条件で、先に工事を頼むと使えません。予算がなくなりしだい終わる先着順の制度もあります
電話する先は、保健所か、区役所・市役所の生活衛生課です。助成金がなくても、同じ電話で殺鼠剤の配布や捕獲器の貸し出しをしているかを聞けます。
個人宅は役所の無料支援から始め、天井裏なら業者の無料調査を使う
個人の家のネズミ駆除は、役所の無料の支援から始めてください。殺鼠剤の配布や捕獲器の貸し出しがあれば、それと市販の粘着シートで、1階の台所まわりの数匹なら対処できます。賃貸なら、何より先に大家か管理会社へ連絡します。
天井裏から足音がする、1週間たってもトラップにかからない、フンが増え続けるなら、巣が手の届かない場所にあります。その段階では助成金を探し続けるより、無料で調査してくれる業者に被害の範囲を見てもらうほうが、結果として安く済みます。
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よくある質問
市役所や保健所はネズミを駆除してくれますか?
駆除はしてくれません。今回調べた13の自治体の公式ページに、駆除まで引き受けるという記載はありませんでした。相談、殺鼠剤の配布、捕獲器の貸し出し、専門家の派遣(大田区)のどれかが中心です。
賃貸で自分で頼んだネズミ駆除の費用は大家に請求できますか?
先に大家に知らせずに頼んだ費用は、払ってもらえないことがあります。民法607条の2では、伝えても大家が相当の期間内に動かないときや急ぎの事情があるときは借りている人が修繕できますが、費用で揉めないよう、頼む前に書面かメールで大家の了解を取ってください。
殺鼠剤はどこで無料でもらえますか?
住んでいる市区町村の保健所や生活衛生課の窓口です。2026年9月時点で、船橋市・新宿区・江東区・草加市などが配っています。北区のように配布をやめた自治体もあるので、行く前に電話で確かめてください。
ネズミ駆除の助成金は年度によって変わりますか?
変わることがあります。予算の範囲で先着順にしている制度や、北区の殺鼠剤のように配布を終えた支援もあります。この記事の内容は2026年9月26日に各自治体の公式ページで確認したものなので、申し込む前に自治体のページで最新の条件を見てください。

