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家や店舗など屋内にネズミが侵入してきた場合、なんとか早く駆除したいと思うでしょう。駆除するための方法はたくさんあるのですが、殺鼠剤や粘着トラップを使用するのは大変ですし、ネズミの死骸を回収する手間が発生してしまいます。ネズミの死骸は誰しも見たくないものです。
そこでそういったネズミの死骸を見たくない方向けに販売されているのが、ネズミの忌避剤。その名の通り、忌避剤というのはネズミが近寄りにくくなるようなものです。ドラッグストアーやホームセンター、インターネットでも手軽に購入できるものが多く、家のネズミ対策に忌避剤を探している方も多いのではないでしょうか。
忌避剤は殺鼠剤のような毒を使用するわけではないので人体にも害が少ないネズミ対策。忌避成分の薬剤が入っているものだけではなく、天然由来の成分(ハーブ)で作られたようなものもあります。スプレー式のものもあれば、ゲル状のものも販売されており、状況に合わせて使い分けることが可能。
しかし、私たち駆除業者からすると忌避剤だけでネズミ対策をするのは不十分。ネズミを駆除するのであれば、生息している巣を撤去し、そもそもの侵入経路を遮断しなければいけません。忌避剤そのものに効果がないわけではないのですが、使い方を間違うと全く効果を発揮できないのです。
そこでこの記事では、ネズミ忌避剤の種類と効果的な使い方についてご紹介します。「ネズミ被害はなんとかしたいけど、ネズミの死骸は見たくない!」そんな方は忌避剤を上手に使ってネズミ対策をしておきましょう。
忌避剤はネズミが嫌いな匂い、味がする
ネズミ対策の忌避剤は、ネズミが嫌う匂いを発するものです。ネズミが嫌いな匂いを発しているため、その場所にネズミが寄り付かなくなるのです。忌避剤そのものにネズミを弱らせたり殺したりするような成分は含まれていないため、忌避剤を設置してもネズミを”駆除”することはできません。あくまでも忌避(避ける)効果があるだけ。
匂いで撃退するものなので毒を使用しません。殺鼠剤のような毒は誤って口に入れると人体にも悪影響があるのですが、忌避剤は匂いがするだけで人体に対しての安全性が高いもの。
ハーブ、ハッカのような清涼感あるメントールの香りが苦手
市販の忌避剤に含まれている匂い成分はハーブ、ハッカというような清涼感あるメントール。ミント風の匂いは害虫対策にも使われるものであり、虫や動物が嫌う匂いなのです。忌避剤はこういったメントールの香りが強烈にするものが多く、その匂いによってネズミを撃退します。
実際メントール系の忌避剤には効果があり、私たち駆除業者としてもメントール系の匂いがする忌避剤はよく使用します。駆除作業を行った後、どうしても侵入経路を遮断できない場合などは、忌避剤を一定期間設置することによってネズミが寄り付きにくい環境を作るのです。
メントールの香りそのものは人体に無害なのですが、もし小さなお子さんやペットを飼われているご家庭では要注意。もし赤ちゃんが忌避剤を舐めてしまうと大変ですし、メントールの香りはペットも嫌う可能性があります。思わぬストレスの原因になる可能性もあるため、もしペットを飼われている家庭は設置場所を選びましょう。
辛味成分であるカプサイシンも苦手
メントールに次いでネズミが嫌う匂い成分がカプサイシン。唐辛子に多く含まれる辛味成分であり、この匂いが苦手な人も多いのではないでしょうか。メントールと同じく鼻の奥にグッとくる刺激臭をであり、この刺激臭がネズミを撃退してくれます。
上で紹介したハーブやハッカなどはそのもの単体で販売されていることが少ないのですが、唐辛子であればスーパーでも手に入ります。
人間が食べる物なので基本的に人体には無害。しかし、刺激が強い物なので小さなお子様やペットがいるご家庭では、誤って食べてしまわないように注意が必要です。
唐辛子のカプサイシンは、その匂い成分よりも食べた時の刺激成分がネズミに有効。そのため、ネズミ被害にあっている柱、家具などに設置しておくと効果的でしょう。
忌避剤の種類
忌避剤と一言で言っても、その形状は様々。市販されている忌避剤の中にはスプレータイプのものもあれば、ゲルタイプのものもあります。どちらも成分的に要件を満たしていれば効果があるのですが、有効期間に差があったり、そもそも設置の仕方に工夫が必要です。
忌避剤を使用する時には手軽なスプレータイプの方がシュッと匂いを発するので効果がありそうと感じがちですが、それぞれ使い方を間違えるとネズミに対しての忌避効果が薄くなってしまいます。状況に合わせて使い分けましょう。
スプレータイプ
スプレータイプのネズミ忌避剤はドラッグストアーやホームセンター、インターネットでも手軽に購入できます。スプレー形式でプシュッと忌避成分が出てくるため、狭い場所や高い場所に簡単にスプレーすることが出来るもの。天井裏や床下に施工したい場合でも、ちょっと穴から手を伸ばしてスプレーすることが可能です。
天然ハーブ成分が含まれているものが多く、スプレーした場所に匂いが付着することによってネズミを寄せ付けません。スプレーした後すぐに乾き、その後24時間程度は忌避効果を発揮します。
スプレーするだけの簡単操作で即効性に優れているのですが、効果が24時間程度しか持続しないため、継続的にネズミ対策をしたい場合には毎日スプレーしなければいけません。そのため、根本的な解決には向いていない商品。
スプレータイプはネズミ駆除後の応急処置として
持続力が弱いのが弱点ですが、スプレーするだけの簡単操作で施工できるというのは大きなメリット。そのため、ネズミ駆除を行った後の応急処置として使用するのが向いているでしょう。
殺鼠剤や粘着トラップを使用してネズミ駆除をしたとしても、侵入してくる場所を塞がなければ再発する可能性があります。すぐに塞げるような侵入口であれば良いのですが、中にはすぐ塞ぐのが難しい状況もあります。天井裏の高い位置に空いた穴や、基礎周りの通風口が破られているような場合、塞ぐためには専用の工具が必要になるのです。
そういった時、侵入口を塞ぐまでの応急処置としてスプレータイプの忌避剤を使用します。シュッとスプレーするだけで1日は忌避効果が持続するので、ちゃんと準備してから翌日以降に侵入口を塞ぐ作業に取り掛かれます。
スプレータイプは持続力が弱いので、あくまでも応急処置用だと認識しておきましょう。
ネズミの通り道、入り口に施工する
スプレータイプの忌避剤はスプレーすると匂いが広がりますが、スプレーしていない場所まで忌避効果を発揮するほど強烈な匂いではありません。あくまでもスプレーした場所(忌避成分が付着した場所)だけ忌避効果を発揮するものです。
なので、スプレーするときにはネズミが通っている場所を狙って施工しましょう。
- ラットサインと呼ばれるネズミが通った跡がある場所
- ネズミにかじられた痕がある場所
- 巣の材料になる断熱材、新聞紙、段ボール等
- ネズミが侵入してきている穴
を狙ってスプレーしておくと効果が発揮できます。
ゲルタイプ
ネズミ忌避剤として効果が高いのは、スプレータイプよりもゲルタイプのものでしょう。ゲルタイプの忌避剤もドラッグストアーやホームセンター、インターネットで簡単に購入出来ます。1個あたり1,000円以下で購入できるようなものなので、手軽に使えるネズミ忌避剤。
ゲルタイプは蓋を開けて置くだけなので、設置そのものに関してはスプレータイプよりも非常に簡単。しかし、ネズミ対策を行う場合に重要となる場所は天井裏や床下などの家の隙間。そういった場所に設置するためには点検口を開けて、身を乗り出して設置しなければいけません。効果的な場所に設置しようと思うと、スプレータイプよりもちょっと大変。
ゲルタイプの忌避剤は2ヶ月〜3ヶ月程度の持続力があるため、スプレータイプのように毎日施工する必要もありません。一度設置してしまえば、3ヶ月ほどは放置で大丈夫です。ゲルが少なくなってきたら交換しなければいけないため、2ヶ月〜3ヶ月に1回は設置した忌避剤を確認しましょう。
有効範囲は6畳〜8畳ほど
置くだけで設置できて便利なのですが、その忌避効果の有効範囲は6畳〜8畳ほど。つまり、家の中全体にしっかりと忌避効果を発揮したいと思った場合、それなりの個数が必要になります。ネズミ被害がある部屋だけ設置すると、そのネズミは隣の部屋へ移動するだけかもしれません。
ネズミ駆除で重要なのは天井裏と床下。そういった場所に忌避剤を設置しようと思うと点検口から入っていく必要があります。点検口から中に侵入し、約6畳〜8畳の間隔をあけて忌避剤を設置していかなければならないのです。これはちょっと大変な作業。
ゲルタイプはあくまでも置き型の忌避剤なので、一つ置いただけで完璧ではありません。有効範囲は狭いため、本格的に忌避剤でネズミ対策をしたいのであれば、屋内のネズミを追い出せるくらいに何個も設置する必要があるのです。
侵入口に多めに設置する
ゲルタイプの忌避剤を設置する場合、天井裏や床下に設置することはもちろんなのですが、ネズミの侵入口近くに設置するというのも重要。いくら忌避剤を設置しても、侵入口付近がノーマークだとネズミは忌避剤を避けて移動するだけで、入り放題です。スプレータイプのものと同じく
- ラットサインと呼ばれるネズミが通った跡がある場所
- ネズミにかじられた痕がある場所
- 巣の材料になる断熱材、新聞紙、段ボール等
- ネズミが侵入してきている穴
に忌避剤を設置しましょう、ゲルタイプの忌避剤を設置する時には、設置する場所に注意が必要ということです。
市販の忌避剤以外にネズミ対策に使えるもの
ネズミ忌避剤というのはネズミが嫌いな匂いを発することによってネズミを寄せ付けない仕組みで作られています。つまり、何か特別な効果がある成分が含まれているのではなく、重要なのはネズミが嫌う匂いなのです。そのため、ネズミ専用の忌避剤を購入しなくてもネズミを寄せ付けない状態を作ることは可能。
ここではネズミ対策に効くアイテムを3つご紹介します。
ネズミ対策をしたいけど、まずは簡単に家にあるもので出来ないかな?
忌避剤って薬っぽくて、ちょっと抵抗があるな。
なんて考えている方、まずはこちらの方法を試してもらえると効果的でしょう。
しかし、実際の忌避剤はイメージ通り、ネズミが嫌う成分が発散しやすいように作られているため、お手製のネズミ対策アイテムよりは販売されている忌避剤の方が効果があります。ここで紹介するものはあくまでも代用品として考えてください。
チューブタイプのねりわさび
ハーブやミント、カプサイシンなど、人間の鼻にツーンと来る匂いをネズミは嫌います。そのため、わさびも同じようにネズミ忌避効果があるのです。わさびは人間が食べるものですし、専用の薬剤が含まれているようなものではないため人体にも無害。
忌避剤としてわさびを使用するときは、
- ネズミがかじった痕のある場所
- ネズミが通った跡のある場所
などにねりわさびを塗っておきましょう。その刺激臭でネズミを撃退してくれると同時に、もし匂いに慣れたネズミがが入り込んだとしても、わさびが塗られている箇所はかじられないでしょう。
基本的に人体には無害なのですが、小さなお子様やペットを飼われているご家庭では塗る場所に注意が必要です。もし間違って舐めてしまうと大変。
カプサイシン豊富な唐辛子
上でも紹介した通り、唐辛子もネズミに対して有効です。唐辛子に含まれているカプサイシンという成分はネズミが嫌う匂いを発するため、唐辛子を設置しておくことによってネズミを寄せ付けない効果があります。仮に匂いに慣れたネズミが侵入したとしても、唐辛子をかじることによって驚き撃退する効果も期待できます。
唐辛子を設置する時には、匂いが出やすいように小さく輪切りにして使用するのがおすすめ。辛い匂いが周囲に漂うため、唐辛子をそのまま設置するよりも効果が期待できます。設置する時にはネズミが通った跡がある場所、ネズミにかじられた場所など被害が見て取れる場所に設置しましょう。
唐辛子は天然物なので、強い匂いを発していても人体には無害。ただ、こちらもわさびと同じく刺激物なので、小さなお子さんやペットがいるご家庭では設置場所を選びましょう。天井裏や床下に設置しておけば誤って食べてしまうこともないため安心です。
ハッカ油で作るスプレー
市販のネズミ忌避剤はハーブやハッカの匂いがする成分を含んでいるのですが、ハッカそのもので忌避剤を作ることもできます。コロナ禍にマスクを使用するようになり、息苦しさを解消するためにハッカをスプレーしていた方も多いのでは?そのハッカを使用してネズミ忌避剤を作れます。
ハッカ油スプレーの作り方
- 100円ショップ等で販売されている簡単なスプレーボトルを用意
- ハッカ油を10滴ほど入れる
- エタノールを5ml入れる
- 水を45ml入れる
という順序で50mlのハッカ油スプレーを作ることができます。100ml作りたい場合、それぞれの量を2倍にしてください。
ハッカ油を混ぜる時、必ず最初にエタノールとハッカ油を混ぜてから水を加えてください。油は水と混ざらないため、最初にエタノールを加えておかなければいけません。
ハッカ油スプレーを使うときの注意点
ハッカ油スプレーは引火しやすい液体であるため、火気の近くで使用するのは避けましょう。火そのものが出ていない場所であったとしても、電気配線などは何かのきっかけでショートする可能性もありますし要注意。
また、油がポリスチレンを溶かすため、使用するボトルはポリスチレン製以外のものを選んでください。購入の際に素材を確認すれば分かるはずです。吹きかける対象がポリスチレン製の場合も溶かす可能性があるため、窓枠のサッシなど素材が木材ではない部分は気をつけましょう。
ネズミ忌避剤を使用する際の注意点
ネズミ忌避剤はたくさんの種類があり、設置方法や順序を適切に行えばネズミ対策効果が期待できるもの。しかし、誤った方法で使用すると忌避効果が期待できないだけでなく、ネズミ被害を拡大してしまう可能性もあるのです。市販されている忌避剤にはいかにもすごい効果があるような謳い文句がありますが、その効果を発揮するためにはネズミの習性を理解した使い方が大事。
ここではネズミ忌避剤を使用する際の注意点についてご紹介していきます。
ネズミ駆除をしてから忌避剤を設置する
ネズミ忌避剤はあくまでも忌避(寄せ付けない)のために使用する薬剤。忌避剤そのものに駆除(殺傷)効果はありません。
もしネズミを駆除せず、屋内に生息している状態で忌避剤を設置すると、ネズミの外出を妨げるだけになってしまいます。屋外へ出ようとするネズミが出られず、今まで以上に行動範囲を広げて天井裏をウロウロと徘徊しだすのです。最悪の場合、出口に近寄れなくなることで室内に降りてくるケースもあります。
今まで天井裏物音だけの被害だったのに、忌避剤を設置した翌日から室内にネズミが出てくるようになった。
と被害相談を受けたことが何度もあります。出口に近寄れなくなってしまうため、なんとか食料と水を確保しようと室内へ侵入してくるのです。
ネズミ忌避剤を設置するときには、必ず駆除を最初に行ってから設置しましょう。
侵入口を塞いでから忌避剤を設置する
自分で市販の殺鼠剤などを用いてネズミを駆除し、ネズミ被害が治った後にすぐ忌避剤を設置する方がおられます。ネズミ対策で重要なのは駆除と侵入経路の遮断です。
ネズミは屋外にはたくさん潜んでおり、一つの集団が駆除されたとしても別の集団が侵入してくる可能性が大いにあります。ネズミは優れた感覚を持っているため侵入口を見つけるのが上手く、侵入口を塞がなければ何度も被害が再発するのです。
いくら忌避剤を設置したとしても、忌避効果は徐々に薄れていきますし、ネズミも忌避剤の匂いがしない場所を探して行動し始めます。今までの侵入口に忌避剤があったら、そのすぐ横に穴を開けて侵入することもあるのです。中に入ったネズミが忌避剤の存在を他のネズミに教え、別の入り口を探すケースもあります。
そのため、ネズミ忌避剤を使用する前には必ず侵入口を塞ぐことを覚えておきましょう。
忌避剤設置後も定期的に点検する
忌避剤は匂いを発する成分であるため、空気に触れていると徐々に忌避効果は薄まっていきます。スプレータイプの有効期間は24時間ほど、ゲルタイプでも有効期間は2ヶ月〜3ヶ月ほどです。有効期間が過ぎてしまうと忌避効果はなくなってしまいますし、有効期限内でも徐々に忌避効果は薄まっているのです。
そのため、忌避剤を設置した後は定期的な点検が必要。スプレータイプは継続的な忌避効果が期待できないため、数日後には再発していないか進入口付近の各所をチェックしなければいけません。ゲルタイプの場合も設置後2ヶ月を目安に点検する必要があるでしょう。
もし再発しているのであれば、再度侵入口を探して塞ぐ作業が必要になりますし、中に生息してしまっている場合には駆除作業をやり直さなければいけません。
忌避剤の匂いに慣れてしまうネズミもいる
忌避剤の匂いはネズミが嫌うように出来ているのですが、ネズミにも個体差があり匂いにすぐ慣れてしまうネズミもいます。忌避剤を設置して最初の数日だけはネズミ被害も治ったのに、すぐ今までと同じようにカリカリ…と被害が再発してしまうのです。
まず根本的に駆除を行ってから忌避剤を設置するのはもちろんなのですが、忌避効果を高めるためには匂いだけでなくカプサイシン等の辛味成分を併用しましょう。かじったときに辛い刺激があると、ネズミはそれを学習して同じ場所に寄り付かなくなります。嗅覚より味覚に訴えた方が記憶に残りやすく、ネズミに対して危険信号を送ることができます。
また、忌避剤を継続的に設置したいのであれば、2ヶ月を目安に別メーカーの忌避剤に入れ替えるのも一つの方法です。メーカーによって匂い成分の配合が異なるため、ちょっとした変化を与えることで忌避効果が長続きします。
ネズミ忌避剤の上手な使い方
スプレータイプ、ゲルタイプだけでなく手作りのものまで各種忌避剤をご紹介しましたが、実際に忌避効果を発揮したい場合に大事なのは何を使うかではなく、どのように使うかです。いくら忌避成分が濃い忌避剤を使用したとしても、適切に使用しなければ忌避効果を発揮できません。
私たち駆除業者は駆除することがメインの仕事になるのですが、忌避剤を使用するシーンもあります。プロとして忌避剤を使う場合、どのように使うのかをご紹介します。適切な使い方を知って、ネズミの脅威を解消しましょう。
ラットサインから侵入経路を探す
ネズミ駆除や忌避を行う場合、まずはネズミの行動範囲を知る必要があります。ネズミは常に目に付く場所をうろうろする動物ではないため、行動範囲を知るのは簡単ではありません。そんなとき、私たちはラットサインと呼ばれるネズミの通った跡を確認します。
ネズミは下水道や排水溝、ゴミ箱の中などに生息するためその体は常に汚れています。汚い体で家の中をウロウロと走り回るため、ネズミが通った後には黒い汚れが付着するのです。その黒い汚れをラットサインと呼びます。
ラットサインが確認できる場所
- 天井の四隅
- キッチン家電の裏
- 外壁の隅
- 天井裏の梁
- 電気配線が密集している場所
上記のような場所にラットサインが見つかることが多く、ラットサインがあるということはネズミがその地点を徘徊しているという印です。屋内、屋外にあるラットサインを確認し、まずはネズミがどこから入ってどの場所まで行動しているのかを確認します。
殺鼠剤でネズミを駆除する
ネズミの行動範囲を確認したら、まず最初に殺鼠剤を設置します。
殺鼠剤というのはネズミを高血圧にして内出血を起こさせる毒エサです。内出血を起こしたネズミは目が見えにくくなり、同時に喉が渇くようになります。その結果、体が衰弱して光と水を求めて屋外へ出ていくという薬。殺鼠剤が効いたネズミは水を求めて屋外に出ていくため、排水溝や下水道の中で死亡します。
ほとんどの殺鼠剤は遅効性(効きが遅い)の毒エサであるため、設置してから効果が出るまでに1週間ほどかかります。4、5日程度でネズミが食べ出し、その後5日ほどでネズミの体に異変が出てくるのです。
ネズミは警戒心が強いため、即効性の毒で仲間が死んでしまうと、そのエサを警戒して食べてくれなくなります。効きが遅いというとちょっと不安に感じるかもしれませんが、しっかりと駆除するためには遅効性の殺鼠剤の方が効果的なのです。
また殺鼠剤は1回設置しただけで全匹に対して効果を発揮するのは難しいため、2、3回入れ替える必要があります。1週間ほどを目安に殺鼠剤を入れ替え、約1ヶ月間ほどかけて屋内のネズミに殺鼠剤を行き渡らせます。
殺鼠剤を使用する際の注意点
殺鼠剤はネズミに対して効く毒なのですが、人体にも悪影響のある薬です。少量程度の服用なら異変もないかもしれませんが、あまり多く服用してしまうと頭痛、吐き気などを生じ、最悪の場合は死に至る可能性もあります。使用する際には吸引してしまわないようマスクを着用しましょう。
また、ネズミは人間の匂いに非常に敏感です。忌避剤の匂いを察知して退散していくほど嗅覚が優れているため、もし人間の匂いがするとその場所に近寄ってきてくれないのです。
殺鼠剤は忌避剤と違い、設置するだけではなく、実際にネズミに食べてもらわなければ効果を発揮しません。そのため、殺鼠剤を設置する際にはマスク、手袋、帽子、長袖長ズボンを着用し、なるべく人間の匂いが付着しないように注意しましょう。特に夏場は人間の汗の匂いが漂う可能性が高いため、作業前に着替えてから殺鼠剤を設置しましょう。
侵入経路を遮断する
殺鼠剤でネズミが駆除できた(物音がしなくなった)後に、ネズミが侵入している侵入口を遮断します。ネズミ駆除の時に殺鼠剤や粘着トラップでネズミを駆除して終了という方がいますが、そもそもの侵入口を塞がない限り再発の可能性があります。
ネズミの駆除、追い出しを行った後には侵入口をしっかり塞ぎましょう。最初に確認した侵入経路はもちろん、殺鼠剤の跡を追いかけて侵入口を調べ直すと効果的です。
ネズミ忌避成分(カプサイシン)を含んだパテを使用する
ネズミの侵入口を塞ぐ際、ただ単にフタをするだけでは不十分。段ボールやテープでフタをするなんてのは問題外ですが、モルタル(コンクリート)や鉄網で侵入口を塞いでもかじって穴を空けてしまうネズミがいるのです。
ネズミの侵入口を塞ぐためには、ネズミ専用のものを使用しましょう。ネズミ忌避剤が含まれた防鼠パテというものが売られており、インターネットでも購入できます。私たちもよく使う防鼠パテはキクネンという商品で、パテの中にカプサイシンが含まれているものです。パテで穴を埋めるだけではなく、カプサイシンがネズミを寄せ付けない効果があるのです。
また、穴のサイズが大きいときにはパテではなくパンチングメタルを使用して穴を塞ぎます。パンチングメタルは小さな丸い穴が空いたステンレスの板なので、穴を塞いでも通気性を保つことができます。基礎周りの通気口が破られている場合、パンチングメタルで補修するのです。パンチングメタルは硬いステンレスの板なのでネズミもかじることができません。
しっかりとネズミ対策をする場合、パンチングメタルで穴を塞ぎ、その周囲に防鼠パテ(キクネン)を盛り付けます。そうすることにより、ステンレス版の強度とカプサイシンの忌避効果が発揮され、ネズミが再発しにくい環境を作ることができるのです。
忌避剤を設置する
侵入経路の遮断まで完了したらネズミの忌避剤を設置します。
私が施行する場合、塞いだ侵入口の付近にスプレータイプの忌避剤を吹きつけ、その周囲にゲルタイプの忌避剤を設置します。そして、侵入口からラットサインの付いている場所に向かって3〜4m間隔でゲルタイプの忌避剤を設置するのです。そうすると侵入口付近をしっかり守りつつ、もしどこか別のところから侵入されたとしても以前と同じ範囲は行動できません。
忌避剤そのものにネズミが嫌がる成分が入っているのはもちろんなのですが、もし入ってきたとしてもネズミは今までと違う環境になっていることを警戒して出ていくことが多いのです。
手が届きにくい場所、範囲が広い場所にはスプレー
基本的に天井裏の奥の隅や上部の隙間、床下の奥などはスプレータイプの忌避剤を施工します。屋内からだけでなく屋外からも忌避剤(防鼠パテ)を施工することにより、ネズミの侵入を防ぐことが可能。
ただし、スプレータイプの忌避剤は24時間程度しか忌避効果が見込めないため、数日経ったら侵入口付近の点検を行います。もしそのときにネズミの侵入が確認された場合、その周囲にゲルタイプの忌避剤を敷き詰めたり、粘着トラップを設置して捕獲する等の対策を講じることが多いです。
スプレータイプはあくまでも応急処置用なので、施工後の点検や補修工事が必要になる前提で使用します。
侵入経路の真ん中にゲルタイプを設置
天井、床下などの侵入経路がわかっている場合、その侵入経路の真ん中にゲルタイプの忌避剤を設置します。ラットサインがついているような場所を重点的に、ネズミの行動範囲に対して忌避剤を設置するのです。
基本的に侵入経路を遮断した後に忌避剤を設置するため、ネズミが入ってくることはありません。しかし、何らかの理由でネズミが再侵入してしまった場合でも行動範囲の中に忌避剤を設置することにより追い出す効果が期待できます。
ゲルタイプの忌避剤は2ヶ月〜3ヶ月ほど効果があるため、2ヶ月を目安に点検します。その際にネズミ被害がなく、忌避剤(ゲル)が小さくなっている場合にはネズミ駆除が完了していると判断し、再度忌避剤だけ入れ替えるのです。2回ほど入れ替えて異変がなければ忌避剤を撤去しても大丈夫でしょう。
ネズミは秋から冬にかけて寒くなる季節に屋内に侵入してきます。そのシーズンだけ忌避剤を設置しておくのも効果的です。
ネズミ忌避剤は使い方が大事
ネズミ忌避剤はインターネットでも簡単に購入でき、売り文句を見るといかにも奥だけでネズミが撃退できるように感じます。しかし、実際には適切に使用しなければネズミを追い出すことはできないのです。
もしすでにネズミ被害が発生している場合、何より大事なのはネズミ駆除を最初に行うこと。忌避剤はあくまでも寄せ付けない効果があるだけで駆除(殺傷)はできません。ネズミが生息している状態で忌避剤を設置しても、ネズミの繁殖スピードが早く効果を期待できないでしょう。
ネズミ忌避剤を使用したい場合、ちゃんと駆除してから設置するよう気をつけましょう。殺鼠剤や粘着トラップは市販されており、インターネットでも簡単に購入できます。まずはそういったネズミ駆除アイテムでネズミの駆除を行い、被害が治ったと思ったら忌避剤を設置して再発対策を施します。
忌避剤はあくまでも忌避するためのもの。ネズミ被害を根本解決するためには駆除と侵入経路の遮断が最重要であることを覚えておきましょう。