ゴキブリを見た夜、ゴキブリ対策で最強の商品はどれか、何を買えば終わるのかを調べ始めた。売り場には毒エサ、スプレー、くん煙剤、ワンプッシュが並び、どれも効きそうに見える。私のところに来る相談も、たいていこの迷いから始まります。
先に答えを書くと、市販品でいちばん効くのは、ブラックキャップのようなベイト剤(毒エサ)です。食べたゴキブリが巣に戻ってから死ぬので、目に見えない場所の仲間まで減らせるのはベイト剤だけです。ただし外から入ってくる家、目の前の1匹を今すぐ止めたいとき、卵が残っているときは、ベイト剤だけでは足りず、足す道具がそれぞれ違います。
私は害虫駆除業者として年間800件以上の現場に出ていて、ゴキブリの駆除では業者もブラックキャップとピレスロイド系の殺虫剤を使います。現場での使い分けと、メーカー公式の効能表示をもとに、道具ごとに効く範囲を比べ、ゴキブリの出どころ別に何を組み合わせればよいか、どこから業者を呼ぶべきかをまとめました。
ゴキブリ対策の最強はベイト剤で、足す道具は出どころで決まる
ゴキブリ対策で最強の市販品はベイト剤です。スプレーは当たった1匹、くん煙剤は煙が届いた部屋の中の虫にしか効きませんが、ベイト剤は食べたゴキブリが巣に戻って死ぬので、隠れている仲間まで減らせます。足りない部分を、出どころに合わせて別の道具で埋めます。

アース製薬は、ブラックキャップを食べたゴキブリのフンや死骸をほかのゴキブリが食べ、巣全体に効き目が広がると説明しています(All About ニュースのアース製薬への取材記事)。巣は冷蔵庫の裏や壁のすき間の奥にあり、スプレーもくん煙剤の煙も届きにくい場所です。そこまで薬を運んでくれるのはゴキブリ自身だけなので、私はベイト剤を1番に挙げています。
道具ごとの違いを表にしました。
| 道具 | 効く相手 | 効き目が続く期間 | 区分の例 |
|---|---|---|---|
| ベイト剤(ブラックキャップなど) | 食べた個体と、巣にいる仲間 | 約1年 | 防除用医薬部外品 |
| 殺虫スプレー(ゴキジェットプロなど) | 吹きかけた1匹 | その場だけ | 防除用医薬部外品 |
| 凍らせるスプレー(超凍止ジェットなど) | 吹きかけた1匹(殺虫成分なし) | その場だけ | 殺虫剤ではない |
| くん煙剤(バルサンなど) | 煙が届いた部屋の成虫・幼虫。卵には効かない | 焚いたときだけ | 第2類医薬品 |
| 粘着トラップ(ホイホイなど) | 入ってきた個体(殺虫成分なし) | 開封から約1か月 | 殺虫剤ではない |
| ゴキブリよけ(ハッカなど) | 殺さない。寄せ付けにくくするだけ | 約1か月 | 殺虫剤ではない |
この表で見てほしいのは2列目です。見えない場所の仲間まで届くのはベイト剤だけで、ほかの道具は当たった虫か、その部屋にいる虫で止まります。1本だけ選ぶならベイト剤、と私が答えるのはこのためです。
「でも、置くだけの毒エサで本当に減るのか」と思う方もいるはずです。ブラックキャップと同じフィプロニルを使ったベイト剤は、国内各地のチャバネゴキブリで4種類のベイト剤を比べた研究で、いちばんよく効いています(富岡・柴山、2009年)。置く場所と数さえ守れば、効き目でほかの道具に負けることはありません。
アース製薬の目安は6畳に1〜2個です。12個入なら台所だけで半分ほど使い、残りを洗面所や玄関の近くに回せます。
駆除業者もブラックキャップとピレスロイド系スプレーで駆除する
業者も、市販品と同じブラックキャップとピレスロイド系の殺虫剤を使います。私たちはピレスロイド系の殺虫剤を家具のすき間に入れて隠れている虫を追い出し、ブラックキャップなどのベイト剤を置き、最後にすき間をふさぎます。違うのは、薬を入れる場所を調べてから作業することです。

一般の家での作業は、だいたい次の順番です。
- 見えている虫をジェットスプレーで退治する
- 家具や家電のすき間にピレスロイド系の殺虫剤を入れる
- 肩掛けの専用機械で部屋全体を燻蒸する(ガスマスクと防護服を着ける)
- ベイト剤を巣に近い場所に置く
- 巣になっていた場所を掃除する
- 入り口になっていたすき間をコーキングでふさぐ
3の燻蒸のほかは、市販品でも同じ種類の道具がそろいます。自分で駆除している家から受ける相談で多い間違いは、毒エサを窓際に置く、粘着トラップだけで済ませる、駆除したあとに掃除をしない、の3つです。掃除まで済ませた家は再発が少なく、しない家はかなりの確率でまた出ます。
調べる段階で私たちが置くのは、エサの付いていないただの粘着トラップです。現場ではSHIMADAのゴキプロハーフを使っています。呼び寄せずに通り道の虫だけを捕るので、どこで何匹捕れたかで巣と侵入口の見当がつきます。ゴキブリの出どころを確かめたいなら、ベイト剤より先にこれを置いてみてください。
ゴキブリの出どころは3つで、捕れた虫の大きさで見分けられる
ゴキブリの出どころは「家の中で増えている」「外から入ってくる」「たまたま入った1匹」の3つに分かれます。粘着トラップを1週間置いて、小さな幼虫が捕れたら家の中に巣があり、大きな成虫だけなら外から入っていると見ます。ここではこれを「出どころ3分類」と呼びます。

幼虫は巣のそばからあまり出歩かないので、幼虫が捕れた場所の近くには巣があります。反対に、大きな成虫だけが窓や玄関の近くで捕れるなら、家の外にいたものが入ってきている可能性が高いです。この違いで、買い足すものがまったく変わります。
現場で道具を決める前に私が確かめているのも、この3つのどれかです。出どころが分からないまま道具を足していくと、外から入ってくる家でくん煙剤を何度も焚く、といった空回りが起きます。1週間待つのがもどかしければ、ベイト剤は先に置いてかまいません。外から入ってきた個体が家の中で食べても効くので、無駄にはなりません。ただし窓際ではなく、台所の奥に置きます。
中で増えているなら、ベイト剤を巣に近い場所へ1袋使い切る
家の中で増えているなら、ベイト剤を冷蔵庫の下や流しの下など巣に近い場所に置き、1袋を出し惜しみせず使い切ります。数が少なすぎたり、巣から遠かったりすると、幼虫が餌にたどり着けずに残ります。置いた周りには殺虫スプレーをかけません。
ブラックキャップを置いても減らなかった家で、私が見るのはまず置き方です。窓際や部屋の真ん中に2〜3個だけ置いている、置いた容器に向けてスプレーを吹いている、コンロの脇で油まみれになっている。こうした家では、ベイト剤の効き目より先に、ゴキブリが餌に出会えていません。置き方の見直し方はブラックキャップが逆効果に見える原因の記事に4つにまとめています。
冷蔵庫の横や家具の裏のように、丸い容器が入らない細いすき間に巣がありそうなら、厚さ9mmのフィットタイプが入ります。中身は通常のブラックキャップと同じフィプロニルなので、容器の形だけ替えて、巣のいちばん近くまで寄せられます。
置き方を直して2〜3週間たっても減らないなら、成分の違うベイト剤に替えます。KINCHOのコンバット1年用はヒドラメチルノンで、ブラックキャップとは別の成分です。ブラックキャップを置いた場所はそのままにして、まだ何も置いていない通り道にコンバットを足せば、どちらの容器の中身が減るかで、次に買う薬が決まります。
小さな茶色いゴキブリが台所に続けて出る家は、チャバネゴキブリの可能性が高く、ベイト剤だけでは減りにくい種類です。見分け方と駆除の進め方はチャバネゴキブリの記事に書きました。
外から入るなら屋外用ベイト剤を置き、排水ホースとすき間をふさぐ
外から入ってくるゴキブリには、家の外側で食べさせる屋外用のベイト剤と、入り口そのものをふさぐ道具を組み合わせます。室内用のベイト剤を窓際や玄関の内側に並べても、外のゴキブリを止める役には立ちません。

アース製薬は、ゴキブリが室外機の排水ホースや換気扇など数ミリのすき間から入ってくると説明しています(ねとらぼのアース製薬への取材記事)。私の自宅も、妻が虫を苦手にしているので、通風口をメッシュにし、サンルームのすき間をコーキングでふさいでいます。外から入る家の対策は、薬より先にこの「ふさぐ」作業で決まります。
屋外用ブラックキャップは、玄関・勝手口・ベランダ・室外機のまわりに置きます。雨に強い餌と排水できる容器で、直接雨のかからない場所なら効き目は約1年です。外で食べたゴキブリはほとんど外で死ぬ、とメーカーは答えています。窓を開ける季節の前に置いておけば、家に入る手前で数を減らせます。
エアコンの排水ホースの先は、地面近くに開いたままの家が多く、ゴキブリが室内機までさかのぼってくる入り口になります。ミツギロンの虫無視バイバイは、ホースの先にかぶせるだけの防虫キャップです。360lifeが殺虫成分のない6製品を比べた記事では、網の穴がいちばん小さい製品でした。工具も要らず、取り付けは数分で終わります。
エアコンの配管が壁を通る穴のまわりに、すき間が残っている家もよく見ます。ここは粘土状のエアコンパテを指で押し込むだけでふさげます。私たちが作業の最後にコーキングでふさぐ場所と同じで、薬を使わずに入り口を1つ減らせます。
目の前の1匹はスプレーで止め、食器のそばなら凍らせるタイプ
今見えている1匹を確実に止めるなら、殺虫スプレーがいちばん早い道具です。ゴキジェットプロは防除用医薬部外品で、有効成分のイミプロトリンが当たったゴキブリをすぐに動けなくします。ただし効くのは当たった1匹だけなので、隠れている仲間にはベイト剤を置きます。

私が現場で最初に手に取るのもジェットスプレーです。1匹を逃がすと、どこに潜ったか分からなくなり、探すのに時間を取られます。ゴキジェットプロにはすき間用のノズルが付いているので、冷蔵庫の下や家具の裏に逃げ込んだ1匹にも届きます。1匹見ただけの夜は、これで止めて、死骸の周りを拭けば終わりです。
食器棚やキッチンの調理台の近くで、殺虫剤をまきたくない場所なら、凍らせるタイプを使います。フマキラーの超凍止ジェット 除菌プラスは殺虫成分を使わず、冷やして動きを止めるスプレーで、除菌もできます。止めたあとは動かないうちにティッシュで包んで捨ててください。
ベイト剤を置いた場所には、どちらのスプレーも向けないでください。容器に薬剤がかかると、ゴキブリが餌を食べなくなります。見えた1匹を退治するのはかまいませんが、ベイト剤から離れた場所で吹きます。
くん煙剤とワンプッシュは巣まで届かず、ベイト剤の代わりにならない
くん煙剤とワンプッシュ式のスプレーは、部屋に薬剤を広げて、その場にいる成虫と幼虫をまとめて退治する道具です。食べさせて巣に持ち帰らせる仕組みは無く、くん煙剤は卵にも効きません。焚いた日に死骸がたくさん出ても、残った卵からまたかえってくるので、ベイト剤を置いておきます。
ワンプッシュ式でも、フマキラーのゴキブリワンプッシュプロだけは部屋の空間に吹かず、冷蔵庫の裏や壁ぎわのすき間に1回ずつ押す製品です。押す場所の選び方と1日の上限は、ゴキブリワンプッシュプロの押す場所と6畳4か所の使い方にまとめました。
ゴキブリの卵がかえるまでの日数は、27℃でチャバネゴキブリが約20日、クロゴキブリが約41日という報告があります(辻・水野、1972年)。2回目を2〜3週間後に焚くとチャバネには合いますが、クロゴキブリには早すぎます。くん煙剤を2回焚くより、焚いたあとにベイト剤を置いておくほうが、かえってきた幼虫を確実に拾えます。
家具が多い部屋の奥まで薬を入れたいなら、レックのバルサンプロEXです。第2類医薬品で、6〜8畳用の3個入なら、台所と隣の2部屋を同じ日に焚けます。1部屋だけ焚くと、煙から逃げたゴキブリが隣の部屋に移るだけなので、焚くなら続きの部屋をまとめて焚いてください。焚く前の準備はバルサンの使い方の記事にあります。
バルサンを焚いても減らなかったなら、成分の違うくん煙剤に替えます。アース製薬のゼロノナイトGはブロフラニリドという成分で、ピレスロイド系が効きにくいゴキブリにも効くとメーカーは書いています。速効性はなく、効き目は数時間から数日かけて出るので、焚いた翌日に死骸が少なくても数日は様子を見てください。
ハッカのゴキブリよけは寄せ付けにくくするだけで、駆除はできない
ハッカなどの香りで作ったゴキブリよけは、ゴキブリを寄せ付けにくくするための道具で、殺す成分は入っていません。すでに家の中で増えているゴキブリは減らせないので、ベイト剤の代わりではなく、駆除が終わったあとの予防や、毒エサを置けない場所の補助として使います。
アイボリー製造所のゴキちゃんアウトは国産のハッカを使った置き型で、殺虫剤不使用、効き目は約1か月と表示しています。子どもが床をはい回る部屋や、ペットの食器のそばのように、ベイト剤の容器を置きたくない場所に向いています。
「毒エサを置くのは、子どもやペットがいるから怖い」という方は多いです。アース製薬はブラックキャップについて、容器を触ったりなめたりした程度なら問題ないと答えています。それでも心配なら、子どもの手が届かない冷蔵庫の下や流しの下の奥にはベイト剤を置き、手の届く場所にはゴキブリよけを置く、と分ければ両方を使えます。
コブミカンの精油でゴキブリの数が減ったタイの試験もありますが、効き目は約1週間でした。ハーブで虫を遠ざけるときの効き目の差と、犬や猫への注意は虫除けハーブの比べ方にまとめています。
ホイホイに捕れ続けるかフンが増えるなら、市販品より業者が早い
粘着トラップに捕れ続ける、ベイト剤を置いて1か月たっても減らない、フンが増えている。このどれかがあれば、天井裏や壁の中に巣ができていて、市販品の薬が届いていない可能性があります。ここから先は業者に任せたほうが早く終わります。

私が担当した現場では、夜逃げされたマンションの一室が部屋中ゴキブリだらけになっていたことがあります。玄関に半年置きっぱなしだった長靴の中や、傘立ての中に巣ができていた家もありました。ここまで来ると、ベイト剤を置き足しても追いつきません。
業者の料金は、どこまで増えているかで決まります。私が担当する一般の家では、1匹見かけた程度なら1万〜2万円、夜に電気をつけたら数匹いる状態なら5万円からです。市販品を何本も買い足す前に、一度見積もりを取って比べても損はありません。
たいてい1回の作業で終わり、被害が大きい家だけ1週間〜10日後に追加の作業が入ります。段階ごとの料金はゴキブリ駆除の記事、見積書の見方はゴキブリ駆除業者の選び方の記事にまとめています。
市販品をひととおり試したあとなら、何をどこに置いて、何週間で何匹捕れたかを業者に伝えられます。害虫駆除110番は税込8,800円から受けていて、受付は24時間365日です。電話で試した薬と置いた場所を話せば、調べる場所が絞れて、作業の日に巣まで片付けてもらえます。
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まだ業者を呼ぶほどではないか迷うなら、粘着トラップを台所と洗面所の角に置き、1週間で中を見てください。何も捕れなければ自分で続けて大丈夫です。置き方はゴキブリホイホイの置き場所の記事に書きました。
ゴキブリ対策はブラックキャップ1袋から始め、1か月で見直す
ゴキブリ対策の市販品で1番に置くのはベイト剤です。迷ったらブラックキャップを1袋買い、冷蔵庫の下と流しの下から順に全部置いてください。外から入ってくる家は屋外用とすき間ふさぎを、目の前の1匹にはスプレーを足します。1か月たっても減らなければ、そこが業者を呼ぶ目安です。
ブラックキャップを置いたら、台所の食べこぼしと生ゴミを片付け、段ボールを家の中にためないようにしてください。ほかに餌があると、ゴキブリはベイト剤より先にそちらを食べます。置いてから1か月、見かける回数が減っていれば、その家の対策はもう足りています。
よくある質問
「最強」と書かれた商品は、本当にいちばん効きますか?
商品名や広告の「最強」は、メーカーや販売店が付けた言葉で、効き目を比べた結果ではありません。効き目は区分と有効成分で見分けます。ゴキブリの駆除をうたえるのは医薬品か防除用医薬部外品で、箱に区分と有効成分が書いてあります。
ベイト剤とスプレーは一緒に使えますか?
使えます。アース製薬は、パッケージの使い方を守れば併用して問題ないと答えています。ただしベイト剤の容器やその周りにスプレーをかけると、ゴキブリが餌を食べなくなるので、スプレーはベイト剤から離れた場所で使ってください。
子どもやペットがいる家で使えるゴキブリ対策はどれですか?
ベイト剤は、子どもやペットの手が届かない冷蔵庫の下や流しの下の奥に置けば使えます。手の届く場所には、殺虫成分の入っていない粘着トラップやハッカのゴキブリよけを置きます。ベイト剤の中身を食べてしまったときは、商品の箱を持って医師か獣医師に相談してください。
ブラックキャップを置いたら、ほかの対策はしなくていいですか?
掃除とすき間ふさぎは続けてください。駆除のあとに掃除をした家は再発が少なく、しない家はかなりの確率でまた出ます。外から入ってくる家では、屋外用のベイト剤とエアコンの排水ホースのキャップも足します。