庭に出るたびに蚊に刺されるけれど、子どもや犬がいるので殺虫剤はなるべく使いたくない。そこで虫除けハーブの最強はどれかを調べると、蚊連草、ローズマリー、レモングラス、ミントが次々に出てきます。
先に答えを書くと、置くだけで蚊を寄せ付けない虫除けハーブは、研究では見つかっていません。 蚊連草の鉢植えを置いた人と何も使わない人を比べた試験では、刺された数に差が出ませんでした。ハーブの効き目は、どの種類かよりどう使うかで決まります。鉢を置く、香りを空間に出す、肌に付けるの順に強くなりますが、肌に付けても植物系の虫除けの多くは20分もちませんでした。
私は害虫駆除業者として年間800件以上の現場に出ています。ハーブの匂いには一定の効果があると考えていますが、現場の忌避剤として使うことはあまりありません。この記事では、海外の研究と国・自治体の資料、現場で見たことをもとに、ハーブを使い方ごとに比べ、刺されたくない日に何を使うかまでまとめました。
虫除けハーブの効き目は、鉢植え・香り・肌の順に強くなる
虫除けハーブは、種類より使い方で効き目が変わります。蚊を相手にした試験の数字を並べると、鉢を置くだけではほぼ効かず、香りを空間に出し続けると半分以上減り、肌に付けると効くものの長くて2時間ほどです。このサイトではこれを「ハーブの効き目3つの距離」と呼んでいます。

距離が縮むほど効くのは、蚊が人を見つけるときに、吐く息の二酸化炭素や体のにおい、体温を頼りにしているからです。鉢から漂う香りは、人のにおいを打ち消すほど濃くなりません。
ハーブの匂いそのものには、一定の効果があると私は考えています。ただ、殺虫剤ではなく虫を遠ざける忌避なので、置いたあとに虫が来なかったとしても、それがハーブのおかげなのかを確かめるのはなかなか難しいです。数字の出ている試験を見ると、その「一定」がどのくらいなのかが分かります。
主なハーブ11種を比べると、蚊への数字があるのは精油で、鉢植えで効いたものは無い
よく「虫除けハーブ」に挙がる11種を、香りの成分と研究で分かっていることで並べました。数字が出ているのは、ほとんどが葉から取った精油を肌に付けた試験です。
| ハーブ | 主な香りの成分 | 研究で分かっていること(蚊) |
|---|---|---|
| 蚊連草(カレンソウ) | ゲラニオール、シトロネロール | 鉢植えは何も使わない場合と差なし |
| シトロネラ | シトロネラール、ゲラニオール | 10%の虫除けで0.9〜2.3時間。キャンドルは屋内で14〜29%減 |
| レモングラス | シトラール(約9割) | 肌に使う上限の目安が0.1%と低い |
| レモンユーカリ | シトロネラール | 鉢植えは効果なし。精油は約1時間。成分を加工したPMDは数時間 |
| ペパーミント | メントール、メントン | 原液で45分。5〜10%に薄めると防げなかった |
| ゼラニウム | シトロネロール | 5〜10%に薄めると防げなかった |
| タイム | チモール、カルバクロール | 原液で105〜135分。肌に使う上限の目安は2% |
| バジル | リナロール、オイゲノールなど | 精油で70分。仲間の鉢植えで39.7%減 |
| ラベンダー | リナロール、酢酸リナリル | 香りの成分リナロールを機械で出すと屋内で93%減 |
| キャットニップ | ネペタラクトン | 人の腕での試験でディートより弱い |
| ローズマリー | — | 今回読んだ論文に蚊の数字は無い |
出典: Matsuda ら 1996、Seyoum ら 2002、Müller ら 2008・2009、Fradin & Day 2002、Barnard 1999、Barnard & Xue 2004、Chauhan ら 2005、Maia & Moore 2011(総説)
この表で見てほしいのは、右の列に「原液」が多いことです。ペパーミントもタイムも、効いたのは原液か高い濃度のときで、肌に塗ってよい濃さまで薄めると効き目は落ちます。虫除けハーブで最強を1つ選ぶならタイムの精油ですが、原液のまま肌に付けることはできません。
蚊連草がよく1位に挙がるのは、シトロネラ(イネ科)の遺伝子をゼラニウムに組み込んだ植物だと宣伝されて広まったからです。ところが香りの成分を調べると、シトロネラ油の特徴は見られず、主な成分はゼラニウムと同じゲラニオールでした(Matsuda ら 1996)。名前ほどシトロネラに近い植物ではありません。
鉢植えのハーブは、置くだけでは蚊が減らなかった
鉢植えのハーブを置いても、蚊に刺される数はほとんど減りません。蚊連草の鉢では差が出ず、いちばん効いたバジルの仲間でも4割減でした。
カナダの研究者が野外のヤブカで試した試験では、蚊連草(シトローサ)を使った人と何も使わない人で、刺された数に意味のある差がありませんでした。同じ試験で75%のディートは最長8時間、刺される数を90%以上減らしています(Matsuda ら 1996)。
ケニアで、網で囲った小屋に生きた鉢植えを置いた試験もあります。いちばん効いたのはバジルの仲間(オキムム・アメリカヌム)で39.7%減、2種類を組み合わせても45.2%減でした。レモンユーカリの鉢植えは効果が出ていません(Seyoum ら 2002)。
4割減ると聞くと悪くないように見えますが、これは網で囲った小屋の中の数字です。風が通るベランダや庭では、香りはもっと薄まります。ベランダにプランターを並べて「これで蚊が来なくなる」と期待すると、夏の夕方に裏切られます。
香りを空間に出すなら、キャンドルより機械で出し続けるほうが効く
香りを空間に出すと、鉢植えより蚊は減ります。ただ、キャンドルのように燃やすより、機械で一定の量を出し続けるほうが強く、屋外では効き目が落ちます。
イスラエルの研究者は、同じ香りの成分をキャンドルと拡散器で比べました。シトロネラは屋内のキャンドルで14%減、拡散器で68%減。ゲラニオールは拡散器で97%減まで上がりました。ところが屋外で拡散器から6m離れると、シトロネラは22%減、ゲラニオールは75%減に落ちています(Müller ら 2009)。
この結果から言えるのは、香りは切らさずに出し続けたときだけ効くということです。ハーブやハッカの忌避剤は、置いた直後がいちばん強く、効き目は長く続きません。現場では、1シーズンずっと置きっぱなしのものは、まず効果がなくなっています。私の家でも玄関・勝手口・サンルームの外に虫除けを吊るしていますが、何年も前のままなので、置いていないのと同じです。
日本で「蚊に効く」と書いて売られている置き型や電気式は、香りではなく殺虫成分を出し続ける仕組みです。窓を開けて過ごす部屋や玄関先なら蚊取り線香、毎晩つけっぱなしにする寝室なら火を使わない電気蚊取りが向いています。どちらも防除用医薬部外品で、箱に蚊が適用害虫として書かれています。
ハーブの精油を肌に付けても、蚊を防げるのは多くが20分未満
精油を肌に付けると蚊は寄りにくくなりますが、持つ時間は短く、濃くすると肌を傷めます。刺されたくない日は、ディートかイカリジンの虫除けを使ってください。
アメリカで市販の虫除けを比べた試験では、ディート23.8%が平均301.5分(約5時間)刺されるのを防いだのに対し、大豆油の製品を除く植物系の製品はどれも平均20分未満でした(Fradin & Day 2002)。20分未満では、公園で30分遊ぶ間ももちません。シトロネラ10%の製品でも0.9〜2.3時間です(Barnard & Xue 2004)。
ハッカ油を濃くすれば長持ちするのでは、と考える方もいるはずです。精油を5〜100%で試した研究では、5%と10%ではどの精油も刺されるのを防げず、ペパーミントは高い濃度でしか効きませんでした(Barnard 1999)。一方で、肌に使う濃さの上限の目安はペパーミントで2%、レモングラスは0.1%とされています(Maia & Moore 2011)。効く濃さと、肌に付けてよい濃さが重なりません。
消費者庁の消費者安全調査委員会も、精油を肌に塗ったあとの皮膚のトラブルが続いているとして、原液は塗らずに必ず薄めるよう呼びかけています(消費者安全調査委員会)。
子どもと一緒に使うなら、イカリジン15%の天使のスキンベープ ミスト プレミアムです。ハーブの香りを選びたくなる家庭ほど気になる年齢の制限がなく、国立国際医療研究センターのトラベルクリニックは、イカリジン15%で5〜8時間防げるとしています(国立国際医療研究センター)。
大人が草むらに入る庭仕事なら、ディートのサラテクト 無香料です。ディートは6か月未満の赤ちゃんには使わず、12歳未満は年齢で1日の回数が決まっています(厚生労働省)。
蚊に効くと箱に書けるのは医薬品と医薬部外品だけで、ハーブの虫除けは雑貨
蚊やハエのような衛生害虫を追い払うとうたえるのは、医薬品か医薬部外品だけです。ハーブの苗やハッカ油、「天然成分の虫よけ」の多くは雑貨で、蚊に効くと書くことができません。

東京都の薬務課は、蚊などの衛生害虫の駆除や忌避を目的にするなら医薬品か医薬部外品に当たり、植物を虫から守る園芸用の虫除けは当たらないと説明しています(東京都保健医療局)。肌に付ける虫除けで、厚生労働省が2016年に審査を早める仕組みを作ったのも、ディートとイカリジンの2成分です。
店でハーブ系の虫よけを手に取ったら、箱の裏で「防除用医薬部外品」の文字と、適用害虫の欄を探してください。どちらも無ければ、香りを楽しむ商品として買うのが正解です。箱の読み方と、玄関や網戸での使い方は虫除けの選び方の記事に、庭のボウフラから減らす方法は蚊対策の記事に書いています。

ゴキブリ・アリ・ハエには、精油で減った試験がある
蚊以外の虫では、精油で数が減った試験があります。ただ、どれも濃い精油を決まった場所にまいた試験で、ハーブの鉢を置いた結果ではありません。
| 虫 | 試した精油 | 結果 | 出典 |
|---|---|---|---|
| ゴキブリ | コブミカン(20%) | 野外でゴキブリの数が最大86%減。効き目は約1週間 | Thavara ら 2007 |
| アリ | スペアミント・ペパーミント(10%) | 精油に浸した鉢に15週間、巣を作らなかった | Bernard ら 2020 |
| イエバエ | ペパーミント | 6種の精油でいちばん強く寄せ付けなかった | Kumar ら 2011 |
ゴキブリの試験でも、効き目は約1週間でした。家で使うなら、効く期間が書いてある商品を選び、書いてある期間で取り替えるのが現実的です。
アイボリー製造所のゴキちゃんアウトは、国産のハッカを使った置き型で、殺虫剤は入っておらず、効き目は約1か月と表示しています。ゴキブリを寄せ付けにくくする道具なので、すでに出ている家の駆除には使えません。子どもの手が届く場所のように毒エサを置きたくない所に、駆除が終わったあとの予防として置きます。家の中で増えているときの道具の選び方はゴキブリ対策の記事にまとめました。
ネズミはハッカの忌避剤のそばにも巣を作る。業者はハッカ入りのパテで穴をふさぐ
ハーブ系の匂いは、虫だけでなくネズミにも効きます。それでも、置いただけでネズミが出ていくとは考えないでください。私が担当した現場には、ハッカのネズミ忌避剤のすぐ近くにネズミが巣を作っていた家がありました。

私たちがハッカを使うのは、ネズミの侵入口をふさぐときです。ハッカの成分が入ったパテで穴を埋め、かじって通り直そうとするのを防ぎます。反対に、ハッカやハーブを虫やネズミの忌避剤として家に置くことは、仕事ではあまりしません。効き目がどのくらい続くかを保証できず、入ってくる穴が開いたままでは根本の解決にならないからです。
天井裏の足音やフンが続いているなら、匂いで追い出すより、巣と侵入口を探すほうが先です。巣ができやすい場所はネズミの巣の記事に書きました。
天井裏のネズミを再発保証つきで止めたいなら、ネズミ駆除ザウルス
忌避剤を置いても足音が止まらず、穴をふさぐ作業まで任せたいなら、ネズミ駆除ザウルスです。対応エリアは北海道・沖縄を除く全国で、下請けを使わず自社のスタッフが施工し、料金は税込25,000円からです。忌避剤で一度静かになっても、穴が残っていればまた入ってきます。その点、最長5年の再発保証がつきます。調査と見積もりは無料なので、電話では「どこに忌避剤を置いていて、どこで音がするか」を伝えておくと話が早く進みます。
ミント・レモングラス・ゼラニウムは犬や猫に有毒で、精油の誤飲にも注意がいる
虫を遠ざける匂いは、動物にも影響します。米国動物虐待防止協会(ASPCA)は、ミント・レモングラス・ゼラニウムを犬・猫・馬に有毒、キャットニップを猫に有毒としています。ペットのいる家では、ハーブも精油も置き場所を選んでください。
| ハーブ | ASPCAの分類 | 主な症状 |
|---|---|---|
| ミント | 犬・猫・馬に有毒 | 大量に食べると嘔吐・下痢 |
| レモングラス | 犬・猫・馬に有毒 | 嘔吐・下痢 |
| ゼラニウム(蚊連草の仲間) | 犬・猫・馬に有毒 | 嘔吐・食欲不振・皮膚炎 |
| キャットニップ | 猫に有毒 | 嘔吐・下痢 |
出典: ASPCA ミント、レモングラス、ゼラニウム、キャットニップ
「天然のものだからペットにもやさしい」とは言えません。犬や猫が葉をかじれない高さに鉢を置き、葉を揉んで毛にこすりつける使い方はしないでください。精油はさらに濃いので、ペットの体に付けず、拡散器を使うならペットが入らない部屋で短い時間にします(ASPCA)。
小さな子どもがいる家では、液の誤飲にも気を付けます。国民生活センターは、乳幼児がリードディフューザーの液を飲んで約2週間入院した事故を公表し、飲んでしまっても慌てて吐かせないよう呼びかけています(国民生活センター 2021年4月8日)。ハッカ油やアロマオイルの小瓶も、子どもの手の届かない棚にしまってください。
育てるならレモングラスとペパーミントを鉢で。香りと料理を楽しむつもりで
ハーブを育てるなら、虫除けの効き目は期待しすぎず、香りと料理を楽しむつもりで選ぶのがおすすめです。その中で、香りの成分が蚊の試験に出てくるレモングラスとペパーミントは、育てやすく使い道も多い2つです。
ペパーミントは、葉を摘んでお茶にしたり、手で揉んで香りを楽しんだりできます。ただし地下茎で横に広がり、小さな根のかけらからも芽を出すので、英国王立園芸協会は鉢で育てるよう勧めています。庭に植えるなら、底を抜いた鉢を縁が少し出るように埋めると、広がりを止められます(英国王立園芸協会)。寒さには強く、冬は地上の葉が枯れても春にまた芽吹きます。
レモングラスはトムヤムクンやハーブティーに使う、レモンの香りのする草です。インド・スリランカ原産で寒さに弱く、屋外では冬を越せないので、10月ごろには鉢に移して室内に入れます(Honda 「ハーブで畑を演出」)。これから買うなら、最初から鉢で育てて、寒くなる前に日の当たる窓辺へ動かせるようにしておきます。
どちらも犬・猫に有毒とされているので、ペットのいる家では手の届かない場所に置いてください。
虫が出ない家は、ハーブより掃除と窓とすき間で守る
ハーブは香りを楽しみながら、ほんの少し虫を遠ざける道具です。虫が家に入らないようにするには、虫が隠れる場所と入ってくる入り口を減らすほうが確実です。
私の家は、妻が虫を大の苦手にしています。定期的に家中を掃除し、窓はしっかり閉め、庭はアスファルトにして、雑草が生えたらすぐに抜いています。吊るしている虫除けは何年も前のままですが、それでも虫が部屋の中に出てくることはほとんどありません。
刺されたくない場面ではディートかイカリジンの虫除けを使い、ハーブは香りを楽しむ分だけ育てる。この分け方なら、ハーブに期待しすぎて刺されることも、強い薬を使いすぎることもありません。
よくある質問
蚊連草は虫除けになりますか?
蚊連草の鉢植えを置いた人と何も使わない人で、蚊に刺された数に差は出ませんでした(Matsuda ら 1996)。香りの主な成分はゼラニウムと同じゲラニオールで、シトロネラ油の特徴も見られていません。蚊を避けたいなら、蚊を適用害虫にした医薬部外品の虫除けを使ってください。
ハッカ油スプレーは蚊に効きますか?
ハッカ油は医薬品でも医薬部外品でもないので、蚊に効くと表示することができません。ペパーミントの精油は高い濃度でしか効かず、5〜10%に薄めると刺されるのを防げなかった試験があります。肌に塗るなら原液は使わず、刺されたくない場面ではディートかイカリジンの虫除けを使ってください。
ハーブを玄関に置けばゴキブリは来なくなりますか?
鉢を置くだけでゴキブリが来なくなるという試験はありません。精油で数が減った試験はありますが、効き目は約1週間でした。ハッカの置き型を使うなら効く期間が書いてある商品を選び、その期間で取り替えます。すでに家の中で見かけるなら、毒エサ(ベイト剤)での駆除が先です。
猫や犬がいる家でハーブを育てても大丈夫ですか?
ミント・レモングラス・ゼラニウムは、ASPCAが犬と猫に有毒としています。育てるなら、ペットが葉をかじれない高さか部屋に置きます。精油はペットの体に付けず、拡散器はペットのいない部屋で使ってください。
赤ちゃんにハーブの虫除けを使えますか?
精油は薄めても肌のトラブルが起きることがあり、消費者安全調査委員会は原液を塗らないよう呼びかけています。米国CDCは、レモンユーカリ油とPMDを3歳未満に使わないとしています。赤ちゃんには、年齢による使用制限のないイカリジンの虫除けが使いやすいです。